正直不動産副読本③「共有名義」A面

2022年08月16日

NHKにて好評のまま最終回を迎えた山ピー主演の「正直不動産」を見て悪い不動産屋の多いことに戦慄する声をよく聞くこの頃、ついに、正直不動産公式副読本「不動産業者に負けない24の神知識」という書籍が出版されましたね。

 

悪い不動産屋のあの手この手を紹介しております。

正直不動産を自負するR産託コンサルタンツとしても、これは無視できません。

 

当社なりに、事例解説を行いますので、皆様の一助になれば幸いです。

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TOP画 正直不動産

『第三章「共有持分」』A面

「共有」とは?

法律上の概念で、複数の者が、同一の物を同時に所有している形をいう。

例えば、相続人が複数の場合の相続の際に、遺産が分割されるまでは相続人が遺産を「共有」することになる。また分譲マンションの共用部分は、区分所有者の「共有」に属している。

 

なお、共有物に対する各共有者の権利を「持分」または「持分権」と呼び、それぞれ単独で自由に持分を譲渡することができる。また、共有者の氏名を「共有名義」という。

 

とありますが、実際のところ、夫婦や親族、友人などと、不動産を「共有」することで、どのような問題が起こり得るのでしょうか。

具体事例

これは実際に弊社でお取引した怖い事例(個人情報を保護するため事実とは異なる部分がございます)

 

未亡人のM子様は、福岡市内の閑静な住宅街に一人暮らしされる50代の上品な方でした。

3人のお子様は独立され、10SLDK(屋上あり・地下室あり)という豪邸(査定額:約1億円)が広すぎるとのことで、弁護士とともにご売却相談にお越しになったのが弊社との出会いでした。

 

※ 弊社は時に、弁護士・税理士・司法書士・行政書士・不動産鑑定士など各士業の先生方と協力して業務に遂行することがあります。各々の専門分野が強みになったり、独占業務があったりしますので、案件によっては士業間の連携は不可欠です。

 

売却相談を受けたご自宅の土地の1/10がY村様という方の名義であったため、詳しく伺うと・・・

 

2年前に他界されたご主人 M男様は、会社を経営しており、30年前のことですが、事業資金繰りの関係で友人のY村様にお金を借りたそうです。

「担保なしというのは友人同士とはいえよくないから、土地の一部を共有にしよう」と登記されているケースは意外とよく見かけます。

ただ・・・ワンマン社長だったM男様がいくら借りていて、返済は終わっているのか、M子様にはわからない上に、Y村様は10年前に他界したらしく、Y村様のご家族との交流もないとのこと。

 

これは困りました。不動産が共有となっている場合には「持分者全員の同意」がないと、その不動産の全体を売ることはできません。

 

私共はまず、Y村様の相続人を探ることにしたのですが・・

突如現れた「持分売買業者」

Y村様の相続人探しは難航します。

 

2023年に義務化される相続登記ですが、施行前である当時、登記手続きは放置されており当土地の所有者については30年前の情報(Y村様が所有者)のまま更新されていませんでした。

 

登記住所には別の方が住んでいるし、Y村様の家族の連絡先もご存じでなく、手掛かりが少ない状態での相続人探しに苦戦していたある日、M子様へ一通の手紙が届きます。

コラム用 Xの手紙

突然、毎月の土地使用料を請求されてパニックのM子様。

 

どうして知らないうちに共有持分者が変わったのでしょう?

そして土地の使用料は支払わなければいけないのでしょうか?

 

M子様の立場では苦しいところですが、持分だけの売買も、使用料の請求も、法律上は何ら問題ありません。

 

共有不動産を他の共有者に占有されており、自分はまったく利用できていないというケースでは、他の共有者に対して、自分の持分割合に応じた家賃の請求(「不当利得返還請求」)が可能です。

 

当事例では、M子様がもともと売却を希望していましたので、

 

不動産(土地・建物)を全体で売ること

売買代金は固定資産税評価の割合に応じて按分すること 

売却成立までの持分割合に応じた家賃を支払うこと(額をいくらとするかは争点になりました)

 

M子様の代理人(弁護士)が、新たな共有持分者(有)X不動産と、比較的スムーズに上記を取決めることができました。

 

結果として、売却の希望は叶ったものの、なんだが釈然としない気持ちの残る取引となりました。

何が釈然としないのか

それは、労せず安く共有持分を取得したであろう(有)X不動産に、売買代金の一部に加え、土地使用料を盗られたとの心理が働くせいかと思います。

 

実際に、持分だけを購入する場合、通常の売買価格(全体で売った場合の価格)から単純に持分割合を計算した価格で取引する者は皆無です。共有であるということは、使用に制限がかかりますので、通常価格の半額以下という値付けもあります。

 

当事例の(有)X不動産は、当売買取引にて下記の粗利を出したようです。

 

 売買代金1,000万円+土地使用料100万円

 -取得費400万円(持分購入の価格)

 -諸経費100万円(二回の売買にかかった経費) 売却益600万円

 

なんて悪い奴だ!と憤りたくなりますね。

Y村様はどうしてM子様に相談なく、いわゆる「持分屋さん」へ土地の1/10を売ってしまったのでしょう・・・

 

次回『第三章「共有持分」B面』にて解説します。リンク先コラムもご覧ください。