不動産Q&A(法令等編)

Q.2025年 建築基準法の改正のポイントは?

A.2025年の建築基準法改正の主な目的は建築物分野での省エネ対策の加速です。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、省エネ性能の向上と、空気中の炭素を固定するはたらきのある木材の利用促進を目指しています。

 

既存の建物への影響としては、審査の省略が可能であった「4号建築物」の範囲が狭くなったり、構造計算が必要な延べ面積の要件は縮小されたりすることで、今までより小規模建築物の改築であっても審査が必要になるケースがあり得ます。

 

また建築確認申請の際に、省エネ基準・構造安全性基準適合性を示す図書を提出しなければいけなくなるため、新築時の設計図書を紛失している建物は大規模なリフォーム(確認申請を要する規模の増改築や用途変更)が困難になるという不都合が生じ得ます。

Q.金利上昇が不動産価格に影響する?

A.影響します。

金利が上昇すれば資金調達が難しくなります。資金がなければ買える人が減ります。買える人の減少とは需要減です。需要が縮小すれば価格も下がるという構図が成り立ちますが、単純に一律で価格が下がるだけではない事情もあります。

Q.2024年 相続登記の義務化のポイントは?

A.令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

 

正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の適用対象となります。

 

令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も義務化の対象です。

3年の猶予期間がありますので登記を放置していた方は期間内に相続登記または相続人申告登記(早期の遺産分割が難しい場合の簡便な手続き)を行いましょう。

Q.2020年 民法改正で何か起きた?

A.2020年4月 改正民法(債権法)が施行されました。

背景には①判例の蓄積を取り入れる、②わかりやすい文言にする、③社会経済の変化に対応する、④国際ルールとの適合性を図る、という理由があり、約120年ぶりに改正が行われました。

 

民法という基本法が改正されましたので、様々な取引が変化しました。

 

不動産売買においては、従来は特定物だから現況で引き渡せば、売主の債務は果たされたという考えでした。※特例として「瑕疵担保責任」という考え方はあった

改正後は、原則が「契約に適した物件を引き渡すこと」になったため、引渡後に物件に欠陥(種類・品質・数量に関して契約目的に合わないこと)があれば、債務不履行の一種として売主責任を問えるように変わりました。

 

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Q.スルガショックは不動産の取引にどのような影響を与えたのか?

A.結論を先に言うと「金融機関審査が厳しく」なりました。

 

そもそもスルガショックとは、かぼちゃの馬車問題とも呼ばれ、2018年にスマートデイズ(女性向けシェアハウス“かぼちゃの馬車”を販売及び管理していた不動産投資会社)の経営破綻により明るみに出ました。
同社はずさんな収支計画・入居率の低さ・利益重視の経営スキーム等、問題のある運営が破綻前から問題視されていました。そして、当該物件を購入するための資金を貸し付けていた「スルガ銀行」で、融資基準に満たない人に対しても不正に融資を行っており、その額はなんと1兆円以上にのぼるとみられています。


実は似たようなずさんな収支計画や不正な融資はシェアハウスだけの問題ではありませんでした。

2021年発足の「アパマン(アパート・マンション)オーナーの弁護団」による訴訟がそれにあたります。

 

スルガショックで襟を正した全国の金融機関は、緻密な収支計画を求めるようになり、特に自己資金比率の低い方の借入が困難になりました。「書類改ざんなどの不正行為によってオーナーが高値掴み」という事態はほぼなくなりましたが、フルローンで不動産投資する時代は終わり、頭金2割が平均的な買主の負担になっております。

自己資金の少ない者のチャンスが減った側面もあり、これから新規で不動産投資を始める方には難易度の高い時代になりました。

Q.2018年 宅建業法改正のポイントは?

A.2018年4月1日に宅建業法が改正され、不動産仲介会社による建物状況調査(インスペクション)の説明が義務化されました。

 

インスペクションとは、住宅の劣化や不具合を建築士の資格をもつ専門の検査員が、第三者的な立場で、目視、動作確認、聞き取りなどにより「住宅の現状の検査を行うこと」をいいます。「建物状況調査」とも呼ばれます。新築や中古住宅の売買の際に実施されます。

 

これは日本における中古住宅市場を活性化する目的で、安心して既存住宅を購入できるようにしたいとの狙いがあり始まった制度です。

国は、住宅市場を「古い建物はどんどん取り壊して新築住宅をどんどん建てる」という「フロー型」から、「しっかりメンテナンスをして長期的に使用する」という「ストック型」へ転換しています。

不動産ビジョン2030(外部サイト「国土交通省資料」)を読むとより詳しく将来の方向性がわかります。

政治は価値観と暮らしを作るので、法改正から未来を予測することができるのです。